目次
開催案内
日時
2019年7月12日(金曜日)16時15分~
場所
理学部6号館401講義室
⇒アクセス 建物配置図(北部構内)【4】の建物
プログラム
16:15〜 | ティータイム |
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16:30~
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「ひとりでに組み上がる分子」 分子でできたパーツを自在に組み立てて極限的に小さいコンピュータやマイクロマシンをつくり上げることは、人類が掲げてきた夢の技術のひとつです。今から30年ぐらい前に、私たちは、ばらばらの分子のパーツに金属イオンを作用させると、配位結合と呼ばれる「分子と金属イオンを引きつける弱い力」が作用し、狙いとする働きをもった分子の集合体がひとりでにくみあがる現象を発見しました。本コロキウムでは、このような「分子の自己集合」の原理にもとづいた、究極的な省エネ・省資源のものづくりをお話します。 |
17:50~ |
「タンパク質の品質管理」 生き物の基本単位は細胞です。細胞の中に存在する最重要物質は、DNAとタンパク質です。DNAが遺伝物質(子が親に似るのはDNAを受け継ぐからです)であるのに対して、タンパク質は生命活動の担い手であります。 生命活動の基本はDNAに書き込まれた暗号を解読してタンパク質を正しく作りつづけることと言っても過言ではありません。タンパク質が最適な立体構造を獲得し、それが維持されるための実に巧妙な仕組みをお話しいたします。 |
備考
京都大学の学生・教職員はどなたでもご参加いただけます。申し込み不要。
問い合わせ先
macs*sci.kyoto-u.ac.jp 〔*を@に変えて送信してください〕
講演動画
『ひとりでに組み上がる分子』藤田 誠 氏
『タンパク質の品質管理』森 和俊 氏
開催報告
第9回MACSコロキウムにて、最初に藤田誠氏(東京大学大学院工学系研究科)、続いて森和俊氏(京都大学大学院理学研究科)の連続講演が行われました。
最初の講演タイトルは「ひとりでに組み上がる分子」で、タバコモザイクウイルスやDNAを例に、自己組織化する分子という概念と、その概念をものづくりに使えるのではないか、というご自身の研究動機を紹介されました。実際の実験で、90度と180度の折れ曲がり角度のある"パーツ"分子を配合し、M4L4 square という分子の合成に成功してから、Molecular Magic Ring、M6L4 cageなど次々と新規な分子を作りだしてきたお話をされました。大きくconfinement 効果、巨大分子、固体中溶媒と3つの研究の軸のなかで、今回のご講演では、巨大分子を合成する話をより詳しく紹介されました。
プラトンの立体 (正多面体で5種類)とアルキメデスの立体(半正多面体で13種類)の中で、価数(一つの頂点に集まる辺の数)が4の多面体は5種類(正多面体1つ、半正多面体4つ)あります。ご自身の実験系では、この価数4の系列に沿っているかのように、M6L4 cage (正多面体)、M12L24 sphere(半正多面体)、M24L48 sphere (半正多面体)と、パーツ分子の折れ曲がり角度を変えることによって、巨大分子を合成できることを説明されました。また、次に大きい半正多面体の合成を試みる過程で、M30L60 という未知なる立体に遭遇し、それがゴールドバーグ多面体(六角形と五角形からなる凸多面体)を拡張した立体であることを突き止め、そこから存在が予測される未観測だったM48L96の合成にも成功したというクライマックスは圧巻でした。
質疑応答では様々な観点から議論がなされ、懇親会でも今後の研究姿勢など、貴重なお話しを聞くことができました。(文責: 太田洋輝)
二人目の森和俊氏の講演は「タンパク質の品質管理」という演題で、細胞や細胞内小器官(細胞内に複数ある大きな臓器)の説明や生物物理学の歴史などの基本的な知識の説明から始まりました。続いて、生命活動の担い手であるタンパク質の「品質」について、アンフィンゼンのドグマ「アミノ酸の並ぶ順番が決まれば、タンパク質の高次構造は自発的に決まる(=自己組織化)」を紹介する一方、”実際”の細胞内はタンパク質濃度が高いために疎水性アミノ酸同士の相互作用によって誤った高次構造や凝集体が作られやすいこと、そんな異常タンパク質の分解や修復を行う「分子シャペロン」タンパク質が細胞内に存在することを説明されました。そして、ご自身が酵母を用いて明らかにしてきた、非常事態に分子シャペロンを働かせる(転写誘導する)「小胞体ストレス応答」の分子メカニズムについて解説されました。講演の最後には、小胞体ストレス応答の進化について、①酵母では1つしかないセンサータンパク質が哺乳類では3つ存在して、より高度な品質管理を行っていること、②脊椎動物にはセンサー様タンパク質が5種類存在し、組織特異的な小胞体ストレス応答に関わっていること、などの興趣の尽きない話題をお話されました。この他、自身の研究人生や研究哲学についてもお話しされ、非常に内容の濃い講演となりました。質疑応答では、小胞体ストレス応答の巧妙さや進化的な側面について熱心な議論が行われました。
(文責: 高瀬悠太)